早稲田大学スポーツ科学部です!
【問題】
子どもの頃に遊んだ『かくれんぼう』は、大人になると遊ばなくなる。なぜなのか。考えるところを601字以上1000字以内で論じなさい。
「かくれんぼう」と聞くと、センター試験2009年の本試験の問題を思い出しますね!
そこでは、こんなことが書かれていました。
「隠れん坊は、藤田省三が「或る喪失の経験——隠れん坊の精神史——」という論文で述べたように、人生の旅を凝縮して型取りした身体ゲームである。オニはひとり荒野を彷徨し、隠れる側はどこかに「籠る」という対照的な構図はあるけれども、いずれも同じ社会から引き離される経験であり、オニは隠れていた者を見つけることによって仲間のいる社会に復帰し、隠れた者もオニに見つけてもらうことによって擬似的な死の世界から蘇生して社会に戻ることができる。隠れん坊が子どもの遊びの世界から消えることは、子どもたちが相互に役割を演じ遊ぶことによって自他を再生させつつ社会に復帰する演習の経験を失うということである」
これを知っていると、もうほとんど書くネタは大丈夫ですね。
あとは、ちゃんとした文を書くだけです。
まず、流れを考えましょう。
上の文章の細かい部分までは覚えている必要はないでしょう。
ただ、かくれんぼうを通じて、子供たちは社会に出る準備をするということを覚えていれば大丈夫です。
ここで、ちょっと「子供」はいつ発見されたのかについて解説を入れたいと思います。
子どもはいつ発見されたのか?
子供時代は、まだ社会の構成員としての役割を与えられていません。
これは、近代以降に産業革命が起きて、一定の質を持った労働力が必要となったことによって、「未熟な大人」という意味での子供が生まれたからでした。
大人になって、社会の構成員となるということは、その多くが工場労働者となることを意味する時代でした。工場労働者になるには、訓練が必要です。何もしないでいては、工場労働者にはなれないのです。
工場労働者になるために必要なことはいくつかあるのですが、そのひとつが「社会性」です。
集団の中で、うまくやっていく能力です。
工場で働くためには、ほかの人と一緒に作業をしないといけない場面が多いですよね。
そういうときのために、協調性だったり、一緒に作業をする経験が必要なのです。
そのための訓練となる要素が、いろんな遊びの中に含まれているのです。
かくれんぼうの場合は、主に「社会の外にいる者をどのように集団に取り込むのか」という部分だと思います。また、鬼を出し抜いて、つかまっている人々を解放するのも共同作業の訓練になります。
本来、人間は工場労働者として生まれてきたわけではありません。
世界に、ばらばらに存在する個にすぎません。
それが、かくれんぼうという遊びの中で、隠れている状態です。
そのように隠れている人々を、社会の構成員である鬼が探し出して、社会に取り込むのです。つかまった人々は、いったん鬼のいるそばでまとめて確保されます。
そこがある意味、集団なのです・・・。
まあ、このへん以降は、センターの過去問を読んでみてください。書いてあるので。
文章構成
では、文章構成です。
まず、「かくれんぼう」がどういう遊びなのか、遊ぶ子供たちにはどのような意味を持っているのかを説明しましょう。
子供たちが社会に出る準備をする意味を持っていると書くといいでしょう。
どのあたりが準備となるのかも詳しく具体的に書けるといいですね。
次に、大人になるとなぜかくれんぼうをしなくなるのかに答えましょう。
かくれんぼうを、子供の社会性を養うための訓練と見る場合だと、その役割が果たされたからと答えるべきでしょう。
大人になると、生活のために労働する必要が否応なく生まれ、社会の構成員として取り込まれます。
会社に就職することは、社会や集団に取り込まれることで、逆に、離職することは、社会や集団から外れることを意味します。かくれんぼうでやっていることが実社会でおこなわれているのです。もはや、かくれんぼうで体験する必要性も薄れるわけです。
かくれんぼうで培った経験やスキルをもう実際の生活の場面で使っているので、新規性もなく退屈に見えてしまうのでしょう。
だから、遊ばなくなる。
・・・こんなところでしょうか?
これだけの分量だと、短く感じるかもしれませんが、丁寧に具体的に書いていけばすぐに1000字に達すると思います。
ただ、これだけだと内容的な深みがないので、ちょっと読んでもつまらないですね。
付け加えるとするなら、さきほどもちょっと書きましたが、こどもの社会的地位について近代前後でどのように変化してきたのかということを入れてもいいかもしれません。
子供の発見についての参考文献も下に書いておいたので、よかったら読んでみてくださいね!
【参考文献】
藤田省三「或る喪失の経験——隠れん坊の精神史——」『精神史的考察』平凡社、1982
栗原彬「かんけりの政治学」政治のフォークロア-多声的叙法、1988
フィリップ・アリエス、杉山光信・杉山恵美子訳 『〈子供〉の誕生:アンシァン・レジーム期の子供と家族生活』 みすず書房、1980
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