名古屋大学法学部小論文2020 解答例と解説
こんにちは!
大学受験のポラリスです!
今回は2020年の問題です!
出題内容
2020年は大問2題で、問1は本文まとめ問題で、問2は自分の意見を書く問題でした。
課題文は、法学とは関係ない文章でした。
入江昭「歴史家が見る現代世界」講談社現代新書、2014年からの出題でした。
課題文は、現代のグローバル化が不可逆なものと指摘した上で、今後の世界がどのようなものになるかを考察している内容です。
とにかく、具体例が多いので、それを軽く読んで、先に大事なところをしっかりと読むというメリハリがつけられれば結構速く読めたのではないでしょうか?
内容も、具体例が多いことが影響してか、わかりやすい文章になっていますね。
ただし、こういうときは、ちょっとしたミスが命取りになります。
単にわかりやすい回答を書いただけでは差が付きにくいからです。
ちゃんと内容に沿った答えを問1では書かないといけませんし、問2でも課題文を踏まえた上でわかりやすい文章で書くことが大事となってきます。
逆に、課題文が難しいと、それを懸命にまとめようとしても、出てくる用語を使いきれなくて、なんだかよくわからない文章になってしまう受験生が多いのですが、課題文が分かりやすいとそういう受験生が減るからです。
解説
問1
問題は、2つの時代のグローバル化を比べて、筆者の考える違いを書けという、まとめ問題でした。
名古屋大学はこのような問題が毎年出ているので、過去問を解いたことのある受験生なら、対策もわかっていることでしょう。
問2
この問題では、以下のことを書くように要求されています。
・惑星意識の重要性を筆者が説く理由
・惑星意識が徹底した社会はどのようなものになるか?
・その場合に、過去または現在の具体的事例を挙げる
まず、「惑星意識」がどんな内容なのかを明らかにしないといけません。定義するのです。
この場合の惑星意識は、相対主義的考え方が元にあって、地球全体がひとつにまとまるという考え方のことです。
課題文は前半で19世紀後半から20世紀前半のことを書いていて、その中では白人至上主義やそこから派生される純血主義(優秀な白人の血を純粋なまま残したい)に触れられています。
それとの対比で考えると、惑星意識は相対主義が考えの根っこにありそうです。
絶対主義の弊害を述べ、一方で相対主義の利点を述べると、一つ目の要求には答えたことになりそうです。
次に、そこから課題文は、さらに惑星意識から発生する問題について書いています。
現代のグローバル化は、19世紀後半から20世紀前半のものとは異なり、ヨーロッパが一強となっているわけではなく、いくつかの地域や国だ同時に発展していっています。
現代では、白人やヨーロッパが絶対的に強い状態ではなくなっていますが、強い部分や国がいくつかできただけで、仲良くひとつにまとまるという方向には向かっていないように感じます。一強だったのが、二強や三強などになっただけのように感じます。
また、各地域で人々が交流し、世界が混ざっていくと、格差が生まれたり、格差があることが明らかとなり、それを是正したり克服するために競争が行われるのです。その結果、経済が成長して豊かになる人々が出る一方で、貧しい者や国が発生したり、経済活動の副産物として公害や環境破壊が発生するのです。
課題文はその一例として、エネルギー問題を挙げています。
解答の流れは、課題文と同じように、惑星意識のまま社会が発展した場合の結果について書けばいいとは思います(戦国時代のように覇権を争う感じ)。ただ、自分なりの具体例を挙げる必要があります。選んだ具体例が、惑星意識の表れた例としてふさわしいかがポイントになるでしょう。
解答例では、現状のまま進んでも、各国が集団を形成して自国の利益を優先しているため、全体の利益追求には向かっていないというようなことを述べ、筆者と同じように「惑星意識を持たないと、人類はひとつという社会の実現は難しい」という結論にしています。受験戦略上は、あまり課題文の主張に真っ向から反対するような内容にしないほうがいいい場合が多いと思います。
現行制度では、各国では基本的に自国民しか保護していません。それでは、環境問題等でも自国の利益のことばかり考えてしまう結果になってしまいます。それがわかる具体例として、日本国民と日本人ではない外国人の人権保障比較を挙げています。
以上を参考にして、解答れを読んでみましょう!
解答例
問1
グローバル化は社会、文化、人種などの垣根を超えたつながりをもたらすが、19世紀後半から20世紀前半にかけてのグローバル化は急速に進展することで、同時に既存のアイデンティティの変容への人々の不安感を内包するものであり、反動としての民主主義や排他主義をもたらしすものだった。
一方、現代世界のグローバル化は人や物の交流がより徹底しており、社会・文化・国家などあらゆる境界が取り外されつつあり、「人類は一つ」というグローバル化の進む過程で高まってきた見方を再認識させるものである、地球は広い宇宙にある一つに過ぎないという惑星意識が高まっていることも特徴である。(276字)
問2
「惑星意識」が重要なのは、現代の経済成長か環境保護かというジレンマの妥協案として考えられた自然環境保全の可能な枠組みの中での経済発展である持続可能な発展を目指す中で、エネルギーの確保、動植物、空気、水、そして人間の存在という前提の存在を浮き彫りにするものだからである。これを徹底化することで、社会は地域・民族・国家の枠を超えて結びつき、限りある自然環境の中で協調して持続可能な発展を志向することができるとしている。
確かに、自然環境もエネルギーも世界全体の問題である。
しかし、「惑星意識」が徹底した社会は、困難が生じるのではないか。自然環境の「権利」やその存続を守る人類の「義務」まで共通の意識を求めることは、すべての国において外国人も自国民と同じ権利を有する扱いを求められることになるからである。
例えば、環境権や基本的人権は世界全体の共通の権利として保証が確立しているわけではない。同時に、別の文化・言語で育った外国人は、同じ惑星で育ったとはいえ別の人間であり、別々の考えを持っていることは尊重されなければならない。日本でも人々が持つ権利は日本国憲法の下保証されているが、日本国籍を持たない外国人に基本的人権など多くの権利は認められていないので、「惑星意識」の徹底した社会は既存の権利概念、さらには憲法といった既に確立した法体系までも含んだ大きな変革が求められ、これは国民に不和が生じる。存在しているだけで権利を有するという普遍の権利意識を人類全体で共有しなければ、「惑星意識」が徹底された社会は構築されないのである。(659字)
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